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Sapporo Chapter of Wild Bird Society of Japan

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写真家の使命と北海道自然雑誌

大橋弘一(野鳥写真家)

プロの野鳥写真家となって早くも5年目。先月、東京書籍から発行した6冊目の拙著「鳥の名前」はお陰様で結構売れているらしい。お買い上げ頂いた皆様にまずは御礼を申し上げたい。

ところで、アマチュア時代から私はずっと野鳥写真家の使命とは何なのだろうと常に自問自答してきた。鳥の気持ちに配慮し細心の注意を払って撮影しても、鳥たちにとって撮られることはきっと迷惑な行為に違いない。大好きな鳥たちにそんな思いをさせてまで撮る写真が本当に価値あるものとなるためには我々カメラマンはどうしたらいいのだろうか。

500種600種の撮影を目指し、珍鳥が出たと聞けば地の果てまでも飛んで行く人がいる。特定の種をとことん追い続け迫力ある生態を記録する人もいる。数多くの種を網羅することが写真家の使命なのだろうか。生態を解明することが写真家の使命なのだろうか。どちらも、有意義なことではあるだろう。しかし、私はそれだけで終わってはならないと思っている。その仕事が適切な形で発表され、その意義が広く世間一般に理解され、結果として被写体となった鳥たちの健全かつ永続的な存続のために還元されなければならないと、私は思うのだ。

作品がいかに多くの人の目に触れ、自然の大切さをいかに多くの人に感じてもらうことができるか。それこそが写真家の使命であり、それができなければいくら迫力ある写真でも鳥や自然に迷惑をかけてまで撮る意義は見出せない。そして写真を撮る行為が巡り巡って生態系の保全に有意義なものとなるためには、優れた作品のための優れた発表の場が必要である。

ところが現実は、優れた発表媒体は極端に乏しい。「自然」はもともと出版物という発表の場の少ないジャンルであり、さらに、未曾有の出版不況と言われる昨今は自然写真に対する逆風はとても強い。売れないだろうという根拠のない理由で価値ある多くの優れた自然写真が日の目を見ないままに埋もれている。この現状を打破し、写真家たちの社会的地位を少しでも高めたいという気持ちから、北海道自然写真雑誌「ファウラ」を創刊した。私の写真事務所「ナチュラリー」の写真家ネットワークを活かし、様々な得意分野を持つ北海道の自然写真家たちが力を合わせて作る季刊誌である。誰にでも気軽に、また継続的に北海道の自然に親しんでもらいたいと考え、高級感ある写真集ではなく、親しみやすい雑誌という形にした。9月の創刊号には「こんな雑誌を待っていた」「志の高い雑誌」「内容・写真・印刷すべてのクオリティーの高さに驚いた」等々たくさんの賛辞が寄せられ、思いのほか大きな反響を戴いた。

「アニマ」も「シンラ」もない今、このような真面目で楽しい自然の雑誌を待ち望んでいた人たちが確かにいる。そんな手応えをとてもうれしく感じるのである。

※「ファウラ」「鳥の名前」のお問い合わせは
ナチュラリー011-261-1658まで

支部報「カッコウ」2003年12月号より