空飛ぶほ乳類 −蝙蝠−
先日、円山の高級マンションの壁にコウモリらしき物が張り付いているという情報が私の元に寄せられた。聞けば管理人さんが野鳥の会札幌支部に連絡し(空飛ぶものつながりか?)、それが何人かを経て私のところに届いたという。
そのコウモリは11階エレベーターホール脇の壁のタイル目地に足を引っかけておなかをタイルに押しつけるようにしてじっとしていた。はじめは補虫網か何かで捕まえて(保護許可をもっています)、コウモリ用リング(鳥の標識と同じように番号などが刻まれています)を装着し、放遂しょうかと考えているが、コウモリは爆睡中のようであり、つついたら11階から真っ逆様に落ちそうな感じがした。
幸いその日は暖かく、これだったら今晩いなくなるのでは?と判断し、何もせずに立ち去った。次の日、管理人さんからいなくなったという報告を受け、一安心した。
北海道以外のみなさんとコウモリの話をすると、家のそばを飛んでいたとか、小学校に迷い込んだのをみたとか、意外にもコウモリにまつわるエピソードをお持ちの方が多いのに驚く。
しかし、北海道ではコウモリなんか見たことがないという方が圧倒的に多いのである。これは本州では町中でも普通に見られるアブラコウモリ(イエコウモリ)が北海道にはいないからというのがその理由だと考えられている。
実際、去年北海道で初めてのアブラコウモリが函館で発見されたが、こちらは地元の方々にたびたび目撃されていたようである。
アブラコウモリが目撃され易い理由は、夕暮れ時、まだかなり明るいうちから町のあちこちを飛び回るという生態にあるのではないかと思う。
北海道には15種から17種のコウモリが生息しているといわれている。
洞窟の中にいると思われがちなコウモリだが、北海道の種構成の特徴として、樹洞をねぐらとするものが多いことがあげられる。中には樹洞の他に農家の納屋や廃屋をねぐらとして利用するものもあり、その場合は人の目に触れることになる。
その一例として、今回円山のマンションで見つかったヒナコウモリがあげられる。私はヒナコウモリは札幌の町の上空を飛び交っているのではないかと予想している。というのは、さっぽろファクトリーのそばだとか、市街地の駐車場だとかそんなところでも拾われることがあるからである。
また、バットデイテクター(コウモリ探知機=コウモリが発する超音波をキャッチする機械)を使うと、見えないがコウモリが飛翔しているのはよくわかる。これによって、札幌の町のあちこちをコウモリが飛翔しているらしいこともわかってきた。
北海道内では今、コウモリは密かなブームである。
各地の博物館の方々などが、かすみ網による学術捕獲許可を申請し、捕獲調査をおこなっている。ここ5,6年でずいぶんと北海道内のコウモリの分布様式が明らかになってきた。
しかし、生活史についてはまだ不明な点が多い。夏は出産のためにメスが集まりコロニーを作り、お盆明けには分散するということはだいたいわかっているが、冬はどこで冬眠しているのか?といったことは全くわかってない。
今回円山で見つかったコウモリは、分散の途中だったのではないかと考えられる。
札幌市内ではこの30年、コウモリを積極的に調査したという報告がない。そこで私は、この夏まず始めに、札幌市の山際などでの捕獲調査と、古い文献の収集や保護情報の聞き込みをおこなって、札幌市のコウモリ相について調べることにした。
今年の調査では5種の生息を確認した。来年はもう少し市街地の方を調べてみようかと考えている。
同じ空飛ぶ生き物を愛するみなさまからのコウモリ情報をお待ちしている。
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