歌才ブナ林・鳥ごよみ
北限のブナ林を代表する森として天然記念物に指定されている「歌才ブナ林」をフィールドにして15年になりました。もともと花好きだった私が歌才で鳥三昧の日々を過ごしたのは、歌才ブナ林の「鳥ごよみ」を作ろうと、月3回のラインセンサスを行った2001年から2002年のことです。この時の調査で約60種の野鳥が確認でき、その後の観察も合わせると、歌才ブナ林での確認種数は約90種となりました。
この調査のおかげで、季節ごとの鳥の動きを知ることができ、ブナ林での鳥たちとの出会いが新たな楽しみとなったのです。
3月、残雪のブナ林にゴジュウカラのフィーフィーという高い声が響くようになると春はもうじき。4月にウグイス、アオジがさえずり始めると本格的な春の訪れです。その後、センダイムシクイ、エゾムシクイ、コルリ、オオルリ、キビタキと夏鳥たちが順次やってきて、5月のブナ林はにぎやかな鳥のコーラスであふれています。
この季節、ブナの透き通るようなライトグリーンの若葉とのコントラストが美しいのがキビタキの胸のオレンジ色。大木が林立し、低木と高木の中間を埋める亜高木層の木々が少ない明るい歌才の森では、キビタキが下枝に止まっているのによく出会います。そして、耳にこびりつくのはツツドリのポポ・ポポ・ポポという低音のリズムとセンダイムシクイのチョキチョキビ〜のさえずりです。ブナ林を案内していると、鳥に興味のなかった人でもこの2種の鳴き声は確実に覚えていってくれます。
初夏、緑が濃くなったブナ林で印象に残るのがアオバトの声。「ちょっと不気味。人かと思った」と初めて聞いた方はびっくりしますが、手持ちの図鑑でその美しい緑色の姿を見せると「ぜひ一度見てみたい鳥」に格上げです。
7月、鳥のさえずりが静かになり、幼鳥たちがチイチイいいながら飛び交う季節になったかと思うと、足早に夏は過ぎ、9月末にはほとんどの夏鳥の姿は消えてしまいます。
秋、ブナが黄金色に輝く頃、カケスがどんぐりをくちばしからはみ出さんばかりにくわえていたり、ヤマガラやゴジュウカラが、樹皮の割れ目にさしこんだブナの実をつついているところに出会います。また、クマゲラの目撃や鳴き声を聞く機会が増えるのも秋から冬にかけてです。

こんな具合に、歌才ブナ林はブナだけでなく鳥との身近な出会いにあふれている森です。鳥好きな方からは「ここの鳥たちは人なつこいですね」なんて言われるほど。たしかに、1人で歩いていると、人をおそれず目の前に現れてくれることが多く、双眼鏡がなくても鳥の姿、しぐさをよく観察できます。まさに鳥参上!の歌才ブナ林、一度来てみてください。
支部報「カッコウ」2009年12月号より
