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Sapporo Chapter of Wild Bird Society of Japan

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大雪山へのお誘い

鳥類標識調査員 磯 清志

初めに、「由緒正しい新年会」の講師としてお招きいただきましたことを改めてお礼申し上げます。
大雪山の野鳥についてお話しさせていただきましたが、ご期待に応えられたかどうか心配です。

私の話はともかくとして、新年会は和気藹々とした雰囲気で実に楽しいものでした。
会員のグッチ谷口さんの話芸と手芸に大笑い、野鳥ビンゴゲームでは読み上げられる野鳥の名前に悲鳴や溜息そして遠慮がちなビンゴ!…大いに盛り上がりました。
締め括りはオークション。
将来の支部長候補(?)の鈴木君が大活躍する姿に頼もしさと希望を見ることができました。
このようなすてきな新年会に参加でき、会員のみなさんと知り合えたことに心から感謝したいと思います。
本当にありがとうございました。

新年会の折、原稿のご依頼を受け、お断りすることもできずお引き受けした次第です。
そこで、講演でお話しできなかったことを少々書いてみたいと思います。

さて、ご存じのように大雪山は一つの山ではなく山の集合体ですからその山域は広く、様々な環境を含んでいます。
垂直方向には低い方から山地帯、亜高山帯、高山帯があり、それぞれの高さに応じた森林や湿原、荒原などが存在します。
特に、高山帯は気温が低く、冬の北西風が強いなどの影響で独特の景観や生態系が発達しています。厳しい高山帯の環境に適応できた種は限られており、木本類ではハイマツがその代表ですが、とても木本とは思えないような背の低い種類がほとんどです。
このような厳しい環境で鳥たちは逞しく生きています。しかし、高山帯で暮らす鳥たちにとって、冬をいかに過ごすかが大問題です。
ホシガラスのように貯食し、山に残るものもいますが、麓に降りたり、渡りの危険を冒してもより南方へ渡るものもいます。
そして、厳しい冬を生き残ったものは、また大雪山に戻ってきます。初夏の早朝にはハイマツ帯でも鳥たちの囀りでうるさいほどです。
日本で最も厳しい環境の一つと言ってもよいこの大雪山の頂きに彼らを引きつけてやまない何かがあるのでしょう。

なぜ、彼らは毎年、大雪山に戻ってくるのでしょう。いや、本当に戻ってきているのでしょうか。
本当に同じ鳥が戻ってきているかどうかは、大雪山で繁殖した個体に標識を付け、再び大雪山で回収されるまでは、判らないのです。
大雪山生まれの「由緒正しい」大雪っ子が回収されるまで私の「大雪山詣で」は終わりそうにありません。

いつの日か、標識された鳥が渡りの途中や越冬地で回収され、大雪山で繁殖する鳥の渡りのコースや越冬地が判り、大雪山の自然とともにそれらの環境も守ることもできたら、なんて夢を見ながらまた今年もまた山に登りたいと思います。

こんなことを書くと孤高の研究者みたいでかっこいいのですが、実際はというと、日本で最も広い山岳公園の山懐で鳥たちの姿と囀りを堪能し、雪渓でキンキンに冷えたビールで喉を潤す。

嗚呼、何という贅沢!

こんな贅沢な鳥見をしたい方は是非、大雪山へお出かけ下さい。

支部報「カッコウ」2007年3月号より