山岳ガイドの鳥見と夢想
山岳ネイチャーガイド
柳田 和美
「鳥のことを聞いたら、叩かれそう」
とは、登山ツアーに参加している「気の良さそうな・弱そうな?」男性参加者の弁。
何のことはない。
高山植物名のガイドに全神経を集中して聞いている女性参加者の「勢い」に圧倒されて、質問しそこなった、あるいは「場違い」を感じたとのこと。
この人物、実は本州某県の野鳥の会の幹事だった方だそうで、登山終了後にこのガイドが野鳥のことはある程度わかると知って、おそるおそる質問してきた次第。
ちなみに質問されたのは、どうやらノゴマ・ギンザンマシコ・カヤクグリの声の確認だったようです。
山岳ガイドをしていると、先頭なのでどうしても鳥たちとの出会いに恵まれることが多く、得をした気になります。
前出の鳥の他、ウソ・ホシガラス・ビンズイ・ハギマシコなど高山性の鳥たちです。
参加者の中で、鳥に興味のありそうな方は双眼鏡を下げている場合があり、そんな時には喜んで説明します。
いかんせん参加者に占めるバードウォチヤーの割合は残念ながら非常に少ないのが実情で、のどから手が出るほどに、説明したいのに需要がない。
説明しようとしたら、逃げていった等々。
そんな訳でしょうか、ガイドさんには鳥は苦手という方がよくおられます。
私はひそかに一人で「鳥見」を楽しむ場面が多くあり、ガイド業に携われる幸せを感じます。
そんな鳥見でも、ガイドし易いのが、ノゴマの♂のさえずりです。
ハイマツなどの樹上付近で少しの間さえずり続ける場合があり、道外客に喜ばれるからです。
例外もありました。ガイドしにくいギンザンマシコです。
2006年夏のある日、大雪山はトムラウシ山を縦走中の出来事。
五色ヶ原の木道を歩いていると、前方の至近距離にギンザンマシコの♂出現。
それも我がパーティーの前を案内してくれるかのように、ややしばらく「ガイド」つき。
当然参加者全員が余裕を持って確認どころか、なかなか木道から離れない始末。
追い立てるみたいで、歩くのが少々もったいないくらい。ガイドをしていても、珍しい体験。
このギンザンマシコの営巣確認の初記録(1976.日本野鳥の会野鳥352号32-35)をしたのが、前旭川支部長の故石川信夫さん。
その日に亡くなったことを、翌日のトムラウシ山の山頂で連絡を受けたのを、何か因縁めいて感じました(合掌)。
初報告から30年あまり、そんなに古くはないと個人的には考えています。
誰か、ハギマシコ(営巣は確実視されている)の営巣確認しないかなーとは、黒岳→旭岳縦走中に旭岳の上部にてハギマシコを見て、考えた夢想。
