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Sapporo Chapter of Wild Bird Society of Japan

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風力発電とバードストライク

〜エコロジーブームのデメリット〜

ニムオロ自然研究会事務局長 高田令子

世界中で地球温暖化が深刻な影響を見せ始め、エコロジーブームに拍車がかかっています。石油などの化石燃料を海外からの輸入に頼っている日本にとって、エネルギーの生産方法は最も大きな課題です。そんな中、注目されているのが風力発電。四方を海に囲まれた島国である日本にとって「風」は自然界に無限に存在する有力なエネルギー源と言えます。地球温暖化の原因と言われる二酸化炭素などを排出しないことも評価に値するでしょう。一見いい事だらけと思える風力発電ですが、メリットの裏側にはかならずデメリットが存在するものです。

そのデメリットの一つに鳥類への影響が挙げられます。鳥類が風力発電用の風車に衝突して死傷するバードストライクの発生が懸念されており、すでに日本でもその事故の発生が確認されています。日本は、渡り鳥にとって移動の際の重要な通り道となっています。渡り鳥は、その小さな体で信じられないほどの長距離を飛行するために、風のエネルギーを利用します。勿論、風力発電用の風車も良い風の吹く場所に設置されるので、バードストライクの発生は想像に難しくありません。

では、俊敏な動きができる鳥類が、そう簡単に風車に衝突するものなのでしょうか。皆さんは、風車を間近で見たことがありますか。風車のプロペラは、中心部分を見る限りではとてもゆっくりと回転しているように見えます。しかし、一片の長さが20〜30mにもなるプロペラの先端部分の回転速度は想像以上に速く、時に時速数百キロにもなるのです。それでも、鳥たちにその風車の存在は見えているでしょう。でも、夜間や、霧や吹雪で視界が悪い時、突然の突風でバランスを崩す、捕食者に狙われるなど注意力が散漫する、飛行経験の浅い若い鳥などの場合では、バードストライク発生の確率が高まるのではないかと考えています。考えられる影響は他にもありますが、真意の解明やその回避方法は無いに等しいのが日本の現状です。

現在、風力発電の建設に際しては、その改変面積の少なさから環境影響調査の実施は義務付けされていません。自主的に環境調査を実施する業者は増えていますが、日本では、その調査方法や評価方法が確立されていないため、ほとんどの計画が「影響なし」と判断されています。国は、京都議定書の発効に伴う風力発電施設の増設を推し進める前に、国内における影響の実態把握や、調査・研究を組織的に実行し、影響回避に有効な法整備をするべきだったのではないかと思います。

クリーンというイメージの裏側で、多くの生き物が影響を受けているとしたら、これはエコロジーの精神に反するものです。「エコ」が人間勝手な「エゴ」にならぬよう、今、意識を正す必要があるのではないでしょうか。

私は、風力発電自体を否定するつもりはありません。「風」を利用する発想は支持していきたいと思っています。しかし、巨大化が進むプロペラ方式だけが風力発電ではありません。もっと発電効率も良く、環境や生物にも優しい風力発電の方法があるはずと信じています。

風車にぶつかって死んだオジロワシの写真
バードストライクに遭ったオジロワシ

支部報「カッコウ」2005年4月号より