カンムリウミスズメとの思いがけぬ出会い
カンムリウミスズメ(表紙写真参照)はウミスズメ類では最も南で繁殖する種類で、極東アジアの限られた地域に生息する鳥です。ウミスズメの仲間は北半球の北部の地域を主たる生息地としている種が多く、日本でも、繁殖が確認されている多くの種は、主に北海道周辺などの北日本に繁殖地がありますが、カンムリウミスズメは温暖な南からの黒潮の海域などで繁殖する珍しい習性を持つ種類なのです。世界で繁殖が確認されているのは、日本と韓国の南部のみです。カンムリウミスズメだけではありませんが、繁殖のためにだけに、一生のうちの僅かな時間を陸地ですごすだけで、大部分の時を海上で暮らす鳥たちの習性や生態を人類がどのくらい把握できているか、まだまだ未知の部分が多いというのが実情だと思います。
そんな鳥たちを含めた海洋の生き物たちにすっかり魅せられて、私は、ほぼ定期的に支部の探鳥会以外にも苫小牧と八戸間のフェリーに乗り続けています。カンムリウミスズメもこのフェリー航路で出会える印象深い生き物なのです。本州中部以南で繁殖する温かい海の鳥が、北海道沖、北からの親潮の海域になぜ?と不思議に思われる方もいるかもしれません。ここ数年、毎年、初夏の頃から秋ごろに記録されています。そして多くの場合は幼鳥もしくは非生殖羽の羽衣の状態です。青森側の尻屋崎沖や津軽海峡付近だけでなく、苫小牧沖など、北海道側でも記録があります。
私が初めて苫小牧と八戸間のフェリーから確認したのは、2005年7月24日、八戸を朝出て苫小牧へ向かう船上からで、支部行事の探鳥会の二日目でした。午後2時30分ごろ、室蘭沖から苫小牧沖へ寄りつつあった頃、船に近い場所に2羽のウミスズメ類が浮かんでいるのを発見し、双眼鏡でじっくり見る前に一眼レフのデジタルカメラで数枚シャッターを切りました。船が近づくとすぐに2羽とも潜水し再び観察する事ができませんでした。妙に顔の白いウミスズメだな、何かおかしいと思ったのですが、すぐ後にイシイルカの群や、ハイイロミズナギドリの大群などが次々と見られて、謎のウミスズメ類の画像をじっくりと検証する暇もなく苫小牧に入港してしまいました。解散前の鳥合わせの際にはカンムリウミスズを記録に入れず帰路に着きました。帰宅後にPCで確認すると、カンムリウミスズメの幼鳥もしくは非生殖羽でした。この時は北海道沖での記録は少ないので、自分としては大きな発見でしたが、その後も観察の機会や証拠写真の撮影もできました。
私以外にも北海道へ向かうフェリー航路から観察や撮影をしている方もいますし、東北地方沖や他の北海道沖でも見られる事が分かってきました。この鳥の謎の部分が明らかになり、具体的な保護活動が行われて、多くの生き物が安心して暮らせる海の環境が守られていければ大変素晴らしいことだと思います。カンムリウミスズメの非繁殖期の行動については長い間不明な点が多かったのですが、近年その生態が徐々に明らかになりつつあるようです。ウミスズメ類としては早く、12月頃に繁殖地に戻り、2月から5月頃が繁殖期です。陸上で暮らすのは約一カ月で、雛が孵ると、子育ては海上で行い、再び陸に上がるのは翌年の繁殖活動の時です。調査や研究が進まなかったのは、この習性の為でしょう。繁殖地の付近の海域で非繁殖期も過ごす個体もいれば、北日本の海域に来る個体もいるようです。興味のある方は日本野鳥の会のホームページをご覧ください。カンムリウミスズメの事だけでなく北海道の周辺海域の記録も知ることができます。
支部報「カッコウ」2011年1月号より
