雑感「ツルを愛する人」に接して
「ニセコフィールドツアー」で住友事務局長にお世話になって入会してから、もう十二・三年も経ちました。この間全くの不勉強で、鳥の識別度も低く「万年ビギナー」の私ですが、今年、別個の「写真サークル」で観察 のベテラン足立英治さんと出会って触発され、改めて野鳥への思いを深めております。
ところで、今回「鳥参上」へ寄港を依頼されて戸惑っていましたが、観察体験に程遠い私ながら、道内外への旅を通じ、特に「ツルを愛して止まない人」と接しての感慨を拙文ながら纏めてみましたので、一読下されば幸 いです。
「出水平野のツル」と又野末春さん
平成十四年一月下旬、国内最大のツルの越冬地「出水平野」に足を伸ばしました。
旅行前に当方から予約を受けた観察センターに近い民宿の又野末春さんから「ナベヅル、マナヅル、アネハヅル、クロヅル、ソデグロヅルなど沢山のツルが飛来しています。ツルがすぐ見える部屋を用意しておきます。 どうか気を付けて御出で下さい」との心のこもった返事が届いていました。
予定どおり此の民宿にお世話になって翌日夜明け前、庭先の田んぼからツルたちの羽音や騒めきが、窓の障子を通して枕元に聞こえて来てびっくり、いたく感動したことは言うまでもありません。
早朝八時過ぎ、観察センター前に広がる田んぼには、数千羽ものツルが集まっていました(約八十%がナベヅル)。この群れに又野さんは、若い人達と小型トラックに乗って刈り取られた田んぼの通路を回りながら、懸命 に餌を撒いていた姿は今も脳裏に焼き付いております。
既に保護活動家として知られていた又野末春さんは、昨年一月十七日惜しまれながら八十五歳で天国へ旅立たれました。改めて心から冥福をお祈りします。
「鶴見台のタンチョウ」と渡辺トメさん
タンチョウに魅せられて十年前、鶴見台の給餌場で、当時から全国にも知られていた渡辺トメさんが、二十羽位のタンチョウに給餌を終えて、偶然にも写真を撮っていた、私の傍に来て「ご苦労さん」と声をかけてくれま した。当方からも日頃の労をねぎらい、昔の苦労話など聞いていましたが「ツルが増えてきたので、近く退職する夫に手伝って貰おうと思って いる」と話してくれました。当方から「タンチョウが最近は増え過ぎと云われているが・」との問いかけに対してトメさんはすかさず「私もそ う思う」と言い残して、足早に自宅の方へ戻って行ったのが印象に残っています。
渡辺トメさんは現在九十歳になり、なお元気で村の援助を受けながら、ご夫妻で給餌の仕事を続けているそうですが敬服の至りです。「タンチョウ」にふさわしい更なるご長寿を切に祈っております。
以上ながながと終始ツルに関わる話になりましたが、振り返って此の二人から、こよなく野鳥を愛する人の心情と行動力を併せて垣間見せられ、その底に流れる「思いやり」にひとしおの感慨を覚えております。そして 八十路を超えた私ですが、遅ればせながら人生の勉強もさせて貰った気がしております。
支部報「カッコウ」2010年12月号より
