モニタリング — 帯広のアカゲラ調査と全国の森林・草原の鳥類調査
東京大学大学院 生物多様性科学研究室 森さやか
緑豊かな札幌市南区で、近所の野山で遊びながら私は育ちました。そのため、子供のころから野生動物や自然生態系の保護・保全に関心を持っていました。昨年、生態学を学んでいた大学院を修了し、8月から日本野鳥の会の自然保護室で働いています。札幌出身というご縁で、今回の原稿を執筆させていただくことになりました。
現在も大学では、帯広市の農耕地域の分断化した森林に生息するアカゲラの個体群維持のしくみの研究を続けています。キツツキ類は樹木に自ら穴を掘ることができるため、樹洞を利用する他の多くの動物達への樹洞提供者として、森林生態系において重要な役割を果たしています。そのうちアカゲラは、北海道では他のキツツキ類の少ない分断化した森林にも普通に生息しているので、そこでは特に重要な役割を果たしています。つまり、アカゲラの個体群維持のしくみを知ることは、この地域の生物多様性の維持を図る上でも重要だと考えています。
私は1999年からこの研究を始め、毎年調査地の30つがい前後の繁殖個体のほとんどを個体識別し、その繁殖行動をモニタリングしてきました。地味な調査ですが、年数を重ねることによって、営巣木の分布、繁殖成績、個体数の変動、個体の生存や移出入、移動距離、環境要因の変動などのデータを蓄積してきました。最近は、それらを手がかりに個体群維持のしくみや重要な環境要因を明らかにしつつあります。
野鳥の会でも、地道なモニタリング事業を担当しています。環境省からの受託事業であるモニタリングサイト1000(正式名称:重要生態系監視地域モニタリング推進事業)です。この事業では、日本全国の代表的な生態系に設定した約1000か所のサイトを、100年間観測することを計画しています。そして、その結果から生態系の変化を早期に把握し、生物多様性保全のための施策に活かすことを目指しています。
当会が運営している「森林・草原 一般サイト」は、全国422か所に設置されており、本事業の中で重要な位置づけにあるといえます。このような大規模かつ長期的な調査には、多くの市民調査員の継続的なご協力が欠かせません。また、生態系の変化を知るためには、長期的に同一の手法で調査を実施する必要があります。
そこで、調査手法の研修、これまでの成果報告や調査員の拡充と交流を目的に、毎年全国5,6か所で研修会を開催しています。研修会は2日間で、室内講義と野外調査実習を行います。昨年は、全国で100名を超える方々のご参加をいただきました。
研修会では、初めて調査をしてみたいという方の受講も歓迎しています。本事業の調査方法は、一般的な森林や草原の鳥類調査にも使用できますので、ご自身で実施される調査研究にもご活用いただけます。今年度は北海道でも研修会を開催する予定です。札幌支部のみなさまのご参加もお待ちしています。
支部報「カッコウ」2010年7月号より
