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Sapporo Chapter of Wild Bird Society of Japan

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これは使える!「電子の目」

道南桧山支部 橋本英樹

探鳥会などで、普通の鳥を識別する場合も同じですが、近くでじっとしている鳥なら、大きさや色、形など、いろいろな情報を集められますから、しっかり識別できます。でもそれが、遙か遠方を飛んでいる猛禽だったり、一瞬しか見えなかったりした場合は、どうでしょう。少ない情報や印象からの識別では、その精度に不安が混じるのは、仕方ないことだと思います。そして、そんなわずかな情報からでも、野鳥観察の現場をたくさん経てきたベテランなら、確証が無い部分を補う経験でカバーできるのでしょう。が、例えば迷鳥や籠抜けのような場合だったら?経験以上の「事件」が起きてないという保証は、どこにもないのです。

しかも、それが調査の現場だったら、現実問題として「わからないじゃ済まない」のです。種不明のままで、結局は記録できなかったなんていうこともあるのですが、「わからなかった」が「いなかった」という記録になってしまうのは、評価する上で大きな差が出てしまいます。それで、なんとかするための「神の声」でしょうか、その現場になれている人や、対象との距離が近かった人、ベテランの一言など、微妙な根拠で識別しなきゃならなくなったりして。

いずれにしても、しっかりとした証拠が無い以上、折角の観察経験も、次に見た時の「正確な根拠」として蓄積できるはずがありません。

それで、そんな悩みを解決するために、観察結果をなんとか映像記録を残そうと、デジタル機器の利用に取り組んでいます。現時点での到達点を、今回は特集で紹介させてもらいました。

野鳥観察をする方なら、なんとなくわかるかと思いますが、単眼(望遠鏡)よりは双眼ですし、静止画より動画の方が、不思議とよくわかるものです。特集で紹介した機材も、そんな経験から、選択してきたもの。三脚に載っている、あれもこれも。全体がシステムです。

今までは識別を間違っていても、確認のしようもありませんでした。こうして映像という証拠があるお陰で、間違いをかなり減らす事ができていると思います。観察と同時に映像が残っている事で、調査の現場も、かなり様変わりしました。例えば、現場でオオタカと同定していた記録が、宿に帰ってから大きなモニターで映像を確認してみたら、ハイタカになっちゃったりして。時間をかけて繰り返し観察していれば、そんな間違いも当然、修正できたはずです。が、限られた時間の中で結果を求められているというのも、調査現場の実情です。

もっとも、間違いがあるのは調査する方だけじゃないようで。映像化により、個体識別が正確になったことで、クマタカの雌が繁殖期に別の雄と交尾する、浮気の現場も押さえたりできました。前年とペアが入れ替わったりしてしまうことも、良くあることのようです。デジタル機器という「電子の目」が、鳥たちの生活の新たな側面を見せてくれたということでしょう。

さて、この先どんなことが、見えてくるでしょうか。電子の目による情報は、共有できる記録です。目を増やせば、得られる情報も多くなるはず。ぜひ、一緒に取り組んでみませんか?

支部報「カッコウ」2010年8、9月号より