常連さんと一見さん
若い頃は随分とお酒を飲みました。行きつけの店もありました。その店には二日とあけずに来る人もいたようでした。時々というか、忘れない程度に顔を会わせる人もいました。それぞれに店に来る頻度の差はありますが、いわゆる「常連さん」というところです。
店主の応対振りから、来たのは初めてと思われる人も時にはいました。「一見(いちげん)さん」です。常連さんと一見さんに対する店主の対応はだいぶ違っていたようです。常連さんにはずっと常連でいてほしい、一見さんにはそのうち常連になってほしい、なかなか苦労しているようでした。でも、一見さんの中には土地の人ではない人もいるはずです。そのような人はもう二度と来ないかもしれません。高級な店によっては「一見さんお断り」なんていうところもありますが、一般の店では一見さん歓迎でしょう。その一見さんを酒菜にしてみんなで盛り上がるというのも想像されます。
少々長い枕から鳥の話に行きます。言うまでもなく常連さんは普通に見られる鳥です。ただし、一年中の常連(留鳥)、季節の常連(夏鳥、冬鳥、旅鳥)がいます。また、山林の常連、草原の常連、海の常連、河川・湖沼の常連など、場所によっても顔ぶれが違います。それぞれの店にそれぞれの常連がいるのと同じです。
十数年前から私はたくさんの鳥好きの人達の協力を得て、北海道石狩支庁管内の野鳥の毎年の確認記録をまとめています。戦前の古い記録などを除いて、これまでに三二〇種近くの野鳥の生息・飛来が確認されていますが、そのうちの七割近くの約二二〇種が常連さんで、残りの多くは一見さん、あるいは一見さんもどきです。十年、二十年以上も前に一度きりで、後はご無沙汰という鳥も十種ほどいます。
一見さんの中には、その珍しさから多くの観衆を呼び、たくさんのカメラに収められたものが少なからずいます。種によっては、あたかも飛来場所の象徴種であるがのごとく長く語り継がれたりします。でも彼らのほとんどは迷鳥で、偶然や事故の産物です。基本的に石狩の鳥社会に大きな影響を与えるものではありません。石狩の鳥社会を支えているのは、多くの常連さんです。本当に大事なのは常連さんです。
その常連さんにも少しずつ変化が起きています。店の中央で華やかにその存在を誇示していたシマアオジはどうなってしまったのでしょうか。片隅でひそやかにチリリリリと遠慮がちにしていたマキノセンニュウ、時々アジャパーと奇声をあげていたウズラ、彼らも気がつけばめっきりと顔を出さなくなってしまいました。
代わりにカワウやミヤマガラスが常連の仲間入りをしました。どんな店にでも常連の移り変わりがあるのは世の常です。でも、地域鳥社会でのそれは、何か良からぬ自然変化、人為的環境変化を感じさせます。ともすれば地球温暖化と結び付けられそうですが、まだまだ推論の域を抜け出せません。人間社会においては常に何らかの変化・改革が求められるでしょうが、鳥社会においては変化よりも安定です。いつもの鳥がいつもの場所でずっと見られるのが何よりです。
支部報「カッコウ」2009年7月号より
