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Sapporo Chapter of Wild Bird Society of Japan

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謎をはこぶ桜鳥

山田三夫

桜開花情報は東京の結果を伝えて以来は、いつものことだがあまり報じられない。まあ少し前の台風情報と同じあつかいということで、あとは札幌で咲くのを待ちなさいということなのか。
さてみなさんは“桜鳥 さくらどり”をご存知だろうか。わが家の「広辞苑(二版補訂)」には記載がない。「コンサイス鳥名事典」をひくが記載なし。ではではと「野鳥の事典 清棲幸保」を持ち出して見つけました。ムクドリの俗名として『さくらどり・むく・もくどり・むくわり・むくくい』と書かれており、やはり “清棲事典”は俗名に強い。

で謎というのはここからです。つづいて「知里真志保 分類アイヌ語辞典 動物編」でムクドリを調べました。§302にムクドリ;サクラドリがあり、地名語彙としてのハチャム(サクラドリ)を「永田地名解」から七箇所紹介している。

「永田地名解」とは明治24年に北海道庁属永田方正が著した「北海道蝦夷語地名解」のことで、手元の本は昭和47年に復刻されたもの。前書の該当頁を繰ると、札幌郡のハチャムペツ「桜鳥川 桜鳥多シ故ニ名ク 松前氏ノ時ハツサブト訛リ石狩十三場所ノ一タリ 今発寒村ト称ス」とある。二つ目は檜山郡のハチャムペツ「桜鳥川 アッサブト云フハ訛ナリテ」と厚沢部のことであり、三つ目は夕張郡のハチャムペツ。これは栗山あたりとおもわれるがそこまでは記されていない。

アイヌ語地名は植物由来の地名に比べると、動物由来の地名は極端に少なくシカ、ウサギ、カラスガイ、イトウ、チョウザメなどいわゆる食料動物に係わるものがほとんどだ。なぜ主たる食料にもならないムクドリ地名が広い範囲でみられるのだろう。これが一番目の謎。

二番目の謎として、ムクドリは北海道では一年中いる鳥ではなく(昨今は一部が越冬する)夏鳥なのだから、地名にふさわしい動物であるのかということだ。例えはよくないが、カラスのとまっている電柱から左に入ったところが自宅ですというのに似ていないだろうか。

アイヌ語地名研究者山田秀三は、誰がみてもよくわかる地形などが地名になっているということを書いていた。それで今度は「札幌のアイヌ地名を尋ねて 山田秀三」を見る。発寒の項では松浦日誌もひいている。「ハッシャム(土人は)本名ハシャムと云楼鳥の如き鳥多きより号るとかや」
また本文中「但し知里さんは、永田翁の発寒『桜鳥川』説には疑問を持って居られた。座談の折に、ハッ・サム(山葡萄・の傍)じゃないか知らと試案を出された。これは続けて発音すれば正しくハチャムであるので巧い事を考えられるなと驚いたのであった。但し比の種の地名は、今日になって見ると何とも確認する事ができない。」

桜鳥の謎は深まるばかりなのであった。

支部報「カッコウ」2009年5月号より