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Sapporo Chapter of Wild Bird Society of Japan

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ウトナイを歩む 〜傷病鳥獣と向き合いおもうこと〜

ウトナイ湖野生鳥獣保護センター 加藤 智子(かとう のりこ)

視線を正面にむけると、木の葉がおちたミズナラやハンノキの木々が寒さの中ひっしと並び、カラ類が舞い、カササギが群れをなし、オジロワシが空を翔ける。職場のデスクからみえるこの風景は、四季それぞれの表情を映し出してくれます。

私が勤務するこの職場は、苫小牧西部に位置するウトナイ湖のほとりにある、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターです。「野生鳥獣との共生環境整備事業」の第一号として設立され、環境省と苫小牧市が共同で運営する施設です。私は、その業務の一つである、傷病鳥獣救護を担当しています。これまで獣医師として勤務していた小動物病院とはちがい、現在の患者さんはすべて「野生の生きもの」です。

平成14年度にこのセンターが開館し、今年で8年目を迎えます。これまでの保護鳥獣は種数としては150を超え、総個体数としては1000を超え、残念ながら保護状況は、いまだ減少傾向をみせておりません。

保護対象となる傷病鳥獣たちは人為的な要因で傷ついたものたちのみです。最も多い要因としては、建物や窓ガラスなどの人工物への衝突。次いで、交通事故や誤飲、過剰保護など挙げられます。これらは人為的といっても、けっして意図的に発生したものではなく、ただ私たちがなにげなく暮らしているというだけで引き起こしてしまっている事故です。

住宅街で民家の壁に衝撃し、翼の骨がとびでたり、片目がつぶれたもの。水辺に落ちている釣り針を誤飲したことで、餌がとれず衰弱していったもの。ネズミ捕りにかかり全身の身動きがとれず、外敵に襲われたもの。人工物に足をひっかけ、ひざ下が切断されてしまったもの。それらの事例を目の当たりにし、私は初めてその事故の多さ、原因の複雑さを知ることになりました。

そんな彼らのケアに携わり約2年が経過しました。これまで出会ってきたどの傷病鳥獣たちを振り返っても強く印象に残るのは、恐怖におびえながらも、生きる姿勢をさいごまで曲げない姿。彼らは小さくもたくましく、その姿に私はどれだけ“生”の大切さを学んだことでしょう。

いつのまにか、“傷病鳥獣救護”の仕事に、傷の手当だけではなく、彼らのありのままの姿や、彼らから感じた“生”“命”の尊さを、いかに社会へ訴えていくかを考えるようになりました。本来であれば消えて、自然の一部に戻るはずだった命かもしれませんが、こうして出会うことができた意味をとらえ、彼らの“生 ”を最大限に引きだすことが私の使命ではないかと、今、感じております。

ウトナイでの活動をはじめて、2年。これから、まだまだ多くの傷病鳥獣たちと出会い、向き合うことになるでしょう。私は彼らのメッセージを受け止め、どれだけ発信していけるか、この場所から一歩一歩、歩み続けていきたいと思います。

支部報「カッコウ」2009年2月号より