*

Sapporo Chapter of Wild Bird Society of Japan

Home

カラス三昧な日々

野鳥の会札幌支部会員 札幌カラス研究会代表 中村 眞樹子

多くのバードウォッチャーが気にも留めない鳥がいる。スズメやヒヨドリも「な〜んだ!」と言われてしまうのだが、この鳥の場合双眼鏡なんか使わなくても目視で分るので、なお更誰の目にも留まる事がないのである。一体その鳥ってだ〜れ?

その鳥は世の中に知らない人はいないだろうと断言できる「カラス」である。一口にカラスと言ってしまうが、正確にはカラスという鳥はいない。カラスという名は「科名」である。一派一絡げに呼ばれてしまう鳥もカラスだけだろう。他にそんな鳥っていたっけかなぁ。私達の身近にいるカラスには「ハシボソガラス」と「ハシブトガラス」がいる。今回はこの2種を踏まえた上で敢えて「カラス」と呼ばせてもらう事にする。

私が毎日自分のフィールドに行き最初に何をするのかと言うと「カラス達の出席を取る」のである。つまり縄張り内にきちんとご出勤しているかどうかである。カラスはゴミ回収や天候の変化によってご出勤時間にズレが生じる事が多い。繁殖期が終わり雛が独り立ちを始めると縄張りを留守にする事が多い。しかし決して縄張りを捨てた訳ではないので必ず戻って来る。その時を待つのである。常に忍耐が必要である。しかしカラスのご出勤を待ちながら他の鳥を観察できるので決して苦にはならない。むしろ楽しくて仕方がない。

カラスを好ましくないと思う人が多いなか私は何故ここまでカラスに惹かれるのだろう。よく問われる事でもある。「カラスの何処が魅力なんだ?」とか、「カラスを保護しているのか?」と誤解をされてしまう事もある。私はカラスを保護しているつもりはない。ただ、カラスが他の鳥同様に扱って貰えたらという気持ちだけである。

カラスと人との軋轢は大きい。特に繁殖期は人間側がヒートアップしているかのようにも思える。冷静になって考えればカラスだって子供を守るため必死なのである。「カラスに突かれて怖かった」という人がいるのだが、これ自体が勘違いである。カラスを含め鳥は飛びながら突く事は体の構造上不可能ではないか? 突くためには足を踏ん張らないと無理である、もしも本当にカラスに突かれたのならば、少なくてもそのカラスは頭に止まり突いたという事になる。この行動は野生では考えられないので人に飼われていたカラスかもしれない。ちなみにカラスは突くのではなく反動を付けて「足で蹴る」のである。今まで突かれたと思っていた方々はこれを読んで勘違いだった事を分って頂けただろうか?

カラスの頭の良さはもう知られているので敢えて書かない。頭が良いのと同時に好奇心旺盛だという事である。春と秋には多くの渡り鳥が飛来し、鳥見人やカメラマンの目を楽しませてくれる。カメラマンはそれぞれにお気に入りの鳥を撮影しようと必死になっている姿を目にする。時にはそんな人達が円陣を組むように一本の木の周りに集まる事がある。しかし一本の木に集中しているのはカメラマン達だけではなかった。カラスは人が一箇所に集まり何かをしていると興味津々に集まって来る。みんなが注目している木に飛び込んでしまう事がある。「せっかくの鳥が飛び去ってしまったではないか!」と不満げな表情になっている人も少なくない。しかしながら知らず知らずのうちにカラスの好奇心を焚き付けてしまい呼んでしまったのは人間側である。

カラスと鳥見人。この関係は切っても切り離せないだろう。時にはカラスに嫌な思いをする事があるかもしれない。しかしカラスも生態系の一員であるという事を忘れないで欲しい。その事を頭の片隅に入れておきカラスの世界をそっと覗いてくれたら嬉しい限りである。

支部報「カッコウ」2009年1月号より