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Sapporo Chapter of Wild Bird Society of Japan

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ハサンベツ里山づくりの取り組み

栗山町ハサンベツ里山計画 事務局長 高橋 慎

「こんなにたくさんのトンボが帰ってきた」と作業の手を休めて、夕焼けに染まっていくハサンベツの沢の秋空に群れ飛ぶ赤とんぼ(アキアカネ)を見上げながら腰を伸ばす。

上空にオオタカが旋回し、遠くからクマゲラの声が聞こえる。目の前のオンコの木には、ヤマガラが頻繁に訪れ実を運んで行く。トウキビ畑には、もうカケスが降りてきた。

何かしらなつかしい情景が心の中に広がり満たされた気分になった。里山づくりをはじめて6年目。里山の川や池、田んぼに地域の子どもたちの歓声が響き、シオカラトンボやオニヤンマなどなつかしいいろいろな生き物が息づき始めた。まずは目標達成と喜んでいる。

今、栗山で私たちが進めていることは、農業が育んできたたくさんの生き物たちの復元にあるように思える。人が生きていくために必要な食べ物を生み出している農業が、共に生きてきた生き物たちの命と引き換えに発展してきた近代農業のあり方は何であったのか。このことの答えのひとつでも解決できる道筋を明らかにしたいという願いが原動力なのかも知れない。

20年計画策定にあたり、実行委員めいめいのプランを童謡の歌詞になぞり以下のプロジェクトとして事業展開し、着実に成し遂げてきた。


  1. 「春の小川はサラサラ」プロジェクトー2kmの小川の造成

    • 川や池の動植物生態観察ードジョウやトゲウオなど普通の生き物の生息地づくり
    • 川づくり体験学習ー森と土と川と海と大気をめぐる水の循環と人の暮らしの関係
    • 魚道づくりー海と川を往来するサクラマス・カワヤツメ・モクズガ二の遡上
    • 里山にすむニッポンザリガニやエゾサンショウウオなどの生息地づくり


  2. 「ホーホーホタルこい」プロジェクトーヘイケボタルの繁殖地完成

  3. 「夕焼け小焼けの赤とんぼ」プロジェクトー小川・池の造成(多くのトンボ回復)

  4. 「ミズバショウの花が咲いている」プロジェクトー苗畑・繁殖地造成

  5. 「菜の花畑に入日うすれ」プロジェクトー田畑造成

  6. 「ゴトゴトゴットン〜水車」プロジェクトー水車設置

  7. 「森の木陰でドンジャラホイ」プロジェクトー炭焼窯設置・チッパー購入

    • 50ヘクタールの雑木林の町民有志からの寄贈「遠藤さんの森」他ー共生の森と命名し将来に引き継いでいく
    • 森の小径の自然(土壌)観察会 ・植樹活動 ・冒険の森ーツリーハウスづくり
    • チョウの森、クワガタムシの森づくり
    • 恵みの森づくりー「栗拾い」遠足、木の実、きのこ採り
    • 雑木林づくりー間伐、下枝払い


  8. 「カッコウカッコウ鳴いている」プロジェクトーオオタカ・クマゲラの営巣

    • 里山の森や水辺にすむ鳥の生活の場づくりー営巣地と餌採り場の調査と環境づくり


  9. 「歴史の足跡をたどる」プロジェクトー旧道の復元

  10. 「野外スポーツの場づくり」プロジェクトー観察コースの一部造成

私たちが2001年から栗山町で始めた、北海道ではあまりなじみのない「里山」という言葉を使った取り組みの根底にあるのは、市街地と農業地、都市と農村の接点の場づくりを人と人との交流を通して創りあげて行こうという栗山町民を含めた実行委員の確かな思いである。農作物の流通、農薬やクリーン農業、環境、国際化、農村地域の崩壊、生産者の高齢化など農業が抱える課題は多い。失いつつある生産者の希望や誇りに少しでも応援できたらと願いながら、里山計画の活動の中心的柱に農業の技術の伝承を据えている。

国は、自然再生法制定や河川法・土地改良法を改正し、開発行為に環境配慮と地域住民の意向反映を謳った。私はこうした動きの中で、滋賀県や福岡県が既に導入している農業とたくさんのいきものたちとの共生を可能とさせるための直接支払い制度の北海道での実現を夢見ながら、その糸口のひとつでも見出せればと思い、里山に通う毎日である。

励みはいつも、四季折々に私たちを迎えてくれる野鳥や虫の声であり、木々や野花のかおりであり、小川のせせらぎの音と沢をわたる風の心地良さである。

支部報「カッコウ」2007年11月号より