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Sapporo Chapter of Wild Bird Society of Japan

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写真工房ヤチネズミ 主宰  小原 聡

好き嫌いのない人間であったが、最近になって好みの変化に気が付いた。小さな丸い生き物に強く惹かれるのである。
ミソサザイ、ニホンザリガニ、ヤチネズミ・・・キクイタダキの正面顔、エゾモモンガのお尻。
今回は、そんなちょっと怪しいオジさんが5年間、ほぼ毎日観察を続けたエゾモモンガについて話したい。

きっかけはよく覚えていないが、エゾモモンガにむしょうに会いたくなったのが2000年の初冬だった。
地元である札幌で観察したかったが、人の多い札幌での生息地は山奥だろうと思いこみ、多少知識のあった旭川通いが始まった。
運良く、毎回エゾモモンガに会えるようにはなったが、寒い。マイナス20℃を下回る日々が続いた。情熱とやけくそでなんとか春まで観察を続けた。
2001年晩秋、その年の旭川計画をウキウキしながら立てていた頃、その当時勤めていた職場近く、札幌の真駒内川河畔林で偶然見つけた。
紛れもないエゾモモンガの食痕である。興奮しながら辺りを探すと、あった、ウンチのついている樹洞。
嬉しさ半分、怒り半分。そのエゾモモンガの樹洞に向かって「4ヶ月分の旭川までの高速代、ガソリン代をどうしてくれる」とつぶやいてみた。

その後は、札幌で、日中はエゾモモンガの樹洞探し、朝・晩は観察という日々が始まった。
探した樹洞は203ヶ所、そのすべては札幌の森に広く散在していた。
その中でも生息密度が高いのは、樹洞が出来やすい老木や枯れ木が残っている藻岩山などの原生林もしくはそれに近い森との印象を持った。
エゾモモンガが確認できなかったのは、平岡公園、月寒公園、北大構内等、分断された孤立林であった。

さて、エゾモモンガについての生態等は、書籍、テレビ等で多数紹介されており、私がここで紹介するまでもないと思うので、知り得た鳥との関わりを少し報告させて頂く。
「エゾモモンガは鳥の卵を食べる?」という質問をしばしば受けるが、エゾモモンガが昆虫等の動物タンパクを食する行動は見たことがない。
シジュウカラの営巣樹洞を奪って?(註1)子育てしたこともあるが、その卵はエゾモモンガの巣材の下に埋まっていて、食べた形跡は確認できなかった。
エゾモモンガが鳥の雛、卵を食べる事はないと思う。
ただ、樹洞で営巣する多種の小鳥たちは、エゾモモンガが増えすぎると、樹洞をめぐるエゾモモンガとの競合にさらされ、子育ての場が減少する可能性がある。
この辺は充分な観察が出来ていないのだが、体の大きさ、気の強さからエゾモモンガと対等に渡り合えるのはヤマゲラ以上で、ひょっとしたらアカゲラも負けるかもしれない。
知り合いの自動撮影装置にアカゲラを追い回すエゾモモンガが写っていた事がある。
エゾモモンガが身を守り、子孫を繁栄するために一番重要なのが樹洞であるが、その樹洞の51%はアカゲラを中心としたキツツキ類の古巣であった(註2)。
恩を仇で返すとはこの事であろう。
最後に、小鳥の好きな皆さんへ、エゾモモンガはフクロウ、オオタカ等の大好物なので、それらが暮らす健全な森では、エゾモモンガが増えすぎる事はないと思っている。
毎年、空になった樹洞で、ゴジュウカラ、コムクドリ、ニュウナイスズメ等が繁殖している。

さてさて、エゾモモンガについては、5年間の観察で自己満足した。
今後は丸く、より小さいホンドモモンガを追いかけようと思っている。オジサンの怪しさにますます磨きがかかる。

(註1)なんらかの理由でシジュウカラが営巣放棄した後にエゾモモンガが入った可能性が有る。

(註2)冬期間、札幌で確認したモモンガの営巣木203本中、キツツキ類の古巣65本、枝折れ等による自然に出来た樹洞63本、不明73本、その他(廃棄物等)2。

支部報「カッコウ」2007年10月号より