冬に昆虫参上?
違う分野に目を向けてみる、というのはよく言われるとおり難しいもので、いわゆる虫屋の僕はいつまでたっても覚えた鳥の名前はちょっとだけ。
冬になるたび双眼鏡を窓辺に置き、春になるとあきらめる、ということを毎年繰り返しています。
昆虫はというと、冬もいますよね?真っ白な銀世界では、普段気にも留めないような小さな生き物もとても目立って見えます。
ユスリカやカワゲラなど、小さいながらも黒い色をして目立つものがまず目に入ってくるでしょう。
もっとよく見るとトビムシといううんと小さな虫たちも結構いるでしょう?
そんな中で最近観察会などでも紹介されるようになったメジャー昆虫?がクモガタガガンボです。
小雪が降るぐらいのときに少し野山を散歩してみると、毛むくじゃらで長い足の茶色い虫が歩いています。
これがその虫で、羽を退化させた「いかにも怪しい」姿と、雪の上を歩く謎だらけの暮らしぶりが好奇心をくすぐります。
よく見ると後足の腿がぶっとくてお尻に短くてごついはさみを持っているもの、すべての足がほっそりしていてお尻の先がとんがったものがいます。
これはお察しのとおりオスとメスで、お尻の先は交尾と産卵用とすぐわかりますが、太い足は?
オス同士の戦いのためといわれますが、いったいどうやって?
確かに何匹かケースに入れるとときどきからみあっていたり、野外でも足の数が足りないものを見かけるので、冬とはいえ熱いバトルが繰り広げられているのでしょう。
手にとって詳しく見ると、頭が小さく口も見えません。
冬に出てくるほかの虫と同じく、どうやら何も口にせずに歩いているようです。
でも気をつけて!あまり手に乗せていると、暑くて死んでしまいます。
彼らの適温は−10℃から10℃までと極めて狭いそうで、逆にシバレた朝にも凍死したらしい死体も見かけます。
なぜそうまでしてわざわざ冬に、しかも目立つ雪の上を歩くのかは謎に満ちています。
ヨーロッパのある種類ではネズミの巣穴に入り込んで卵を産み、幼虫は巣の下の汚物?を食べてすぐ大きくなり、土にもぐって次の冬をひたすら待つのだとか。
ためしに冷蔵庫で飼ってみると、ばらばらとばら撒かれた卵はすぐ孵り、線虫のような幼虫が1月ほどでみるみる大きくなりました。
しかもすべて冷蔵庫の中で!お気づきでないかもしれませんが、変温動物の昆虫はたとえ北海道のものでも10℃以下になると発育できなくなりますから、これは驚異的な能力なのです。
冬の自然観察は面白い。とは口々に言ってみるものの、やはり夏に比べると生き物の数は少なく、条件はもちろん厳しいんですから、ちょっと一工夫欲しいところ。
僕らも冬の観察会にはほんの少し鳥や木も見て間を持たせます。
冬は異分野に目を向けるチャンスなのかもしれません。
といっても、僕らだって数少ない冬の虫ですら種類まではわからないのですけれど。



