釣師のたわごと
自己紹介を少々。生れ育ちは札幌、一応戦後の生まれです。現在の職業は窓際ムービカメラマン。
野鳥の会札幌支部会員、趣味は皆さんから悪評の釣りをぼちぼちと。どう見ても鳥にとってはあまり歓迎すべき存在とは言えない私です。そんな私に編集担当のKさんからどう間違ったのか原稿依頼がきました。よっぽど困った末のことだったのでしょう、昔からの付き合いもあり引き受けてしまったのです。
さて、さて・・・。昭和四十六年の冬、知床ウトロでのオジロワシの撮影が鳥との付き合いの始まりでした。当時はオジロの数も少なく地元のMさんの案内でかなり苦労して長玉で撮ったのを思い出します。仕事から入った鳥との付き合いですが子供の頃から円山周辺の山々や白石、厚別、茨戸等の川で遊び回っていた感覚が呼び覚まされたのかだんだん自然そのものに魅せられていきました。
映画作りの相棒のWさんに写真家、林大作さんを紹介していただいたのもこの頃です、カワセミ、ヤマセミ始めずいぶん色々な野鳥を撮らせてもらいました。
ある時、林さんの自宅に伺った時、たしか夜七時頃だったと思いますが、すでにパジャマ姿で翌日の撮影に備えて寝る態勢に入っていたのには驚かされました。毎日この状態とのことでした。野鳥撮影にかける思いがすごい人でした。
私自身、鳥への興味は増していったものの、バードウオッチングそのものにはあまり惹かれることがなく、子供の頃にやっていた釣りの世界の方にどんどんのめりこんでいきました。とにかく自然のなかに身をおき、一日中、川や湖で過ごすことが心身の平安と自分の存在を確認できる唯一の方法でした。
竿を振りながら川を上っていくと瀬からの落ち込みがゆったりとしたプール状になったところが出てきました、最高のポイントです、そーっと近づきます。にんまりとかなりすけべ顔になっているかもしれません?!突然バタバタ・・・びっくり、マラードが飛び立ちました。
・・・もうこのポイントはオジャンです。こういう時ほど鳥がにくたらしくなるときはありません。すけべ顔が鬼顔になってしまいます。撮影の時にはブラインドに入りあれほど待ち望む野鳥たちなのにずいぶん勝手なものです。
飛び立ったあとの水面にはボディフェザーが数枚浮いています。まあ今回は許してあげましょう。フライの良い材料になりそうです。
それにしても川や湖で釣りをやっていると野鳥たちにはほんとうに良く出会います。釣りのじゃまをしない分には釣師としても大歓迎なのです。
昔、5月のオコタンペ湖の流れ込みでフライを振っていた私のそばにアカエリヒレアシシギの数十羽の群れが降り立ちました、私の足元の水面をクルックルッとかわいらしく小さなデコイのように泳ぎ回っています。なんか嬉しくなってのんびり釣りをやったのを思い出します。
真冬の道南、利別川のアメマス釣り、対岸の木に止まりじっとこっちを見ている孤高のオジロワシ。
夏の渓流で手が届きそうな岩でチョコチョコと動き回るカワガラス。
竿を振る目の前をスイーと飛んでいくカワセミ、あのコバルトブルーの羽根、思わずヨダレが出てしまいます。
夕暮れの川面をヒラリヒラリと飛び回るエゾフクロウ。
ボボゥーと神秘的に鳴き交わすシマフクロウのつがい。釣りに溶け込んでいるとなぜか不思議と鳥たちに出会えるのです。
ガチンコでお互いビックリすることもありますが、双眼鏡を持たず肩の力を抜いてのんびりと一日川を歩くのも楽しいと思います。いつものバードウオッチングとはちょっと違った鳥たちの世界が見えてくるかもしれません。皆さんもぜひ一度川に浸ってみてください。
などと釣師の弁解とたわごとでした。
- 編集係注
- 「長玉」
- ナガタマ、カメラの望遠レンズ。
- 「マラード」
- mallard マガモのこと。